どうも、今働いている職場もあと1か月で離れる時期になってきたSoraTOMOです。
今回は、ある研修を受けてきたので、その話をしていこうと思います。
ICSLコース研修を受けちゃった
その研修はICLS研修というもの。
あなたは救急救命処置の講習を受けたことがありますか?
ICLS研修もこの救急救命処置の中の講習です。
ICLSってなに?という方がほとんどだと思います。
ICLSとは、日本救急医学会認定の医療者向けの蘇生トレーニングコースのこと。
医療者向けというところが重要で、主に医師・看護師・理学作業療法士・放射線技師などの医療関係者のみが受講できるコースとなっています。
なぜ、医療関係者のみしか受けられないのか。
それは、1次救命処置だけでなく、その後の2次救命処置までを範囲としているから。
ICLSは「突然の心停止に対する最初の10分間の対応と、適切なチーム蘇生を習得すること」を目的としているそうです。
チーム蘇生ということで、医療関係者のみの受講となっているんですね。
この研修は自分の病院では実施していないので、隣町の大病院まで研修を受けにいってきました。
大まかなスケジュールはこんな感じ。
9時から18時までの1日通しての研修でした。
見てもらえばわかると思いますが、結構スケジュールが詰め詰めで…。
実際、受ける前にこのスケジュールを見ただけで嫌な気持ちになりましたね。
実際に受付へ行くと、自分の病院から参加している3名以外は知らない人だらけ…。
高校受験とか大学受験とかで、周りの人がものすごく頭がよく見えちゃう現象。
あれ分かります?
この研修では、周りの人全員がやり手の医療者に見える!
まさにあの感じに陥りました。笑
9時:ついに研修開始。
そして受け持ちを済まして待機していると、ついに始まりました。
「今日担当します、〇〇病院の救急科医師の〇〇です。」
胸には大きな字でERって書いてある!
なんだ、この熱血監督は…。
これが最初の第一印象でした。
多分一緒に研修を受けた人も思っていたと思います。
だって、研修を受けている会場の空気が重かったですから。笑
そんな空気を感じてか、熱血医師は「そんなに緊張しなくても大丈夫!ゆっくりやっていきましょー。」なんて言葉を交えてICLSの概要説明を始めました。
実際に説明が始まると、いかに現時点での救急救命に欠点があるのか。
その欠点を埋めるために僕たちになにができるのか。
といった点が分かりやすく説明され、当初は救急の研修なんて受けたくないなー。なんて思っていましたが、この説明を受けた頃からやっと「これはやらなければ!」と思い始めます。笑
ここで問題です。
自宅で家族が倒れました。それを発見したあなたは救急車を呼びます。
救急車を要請してから、自宅に来るまでどのくらい時間がかかると思いますか?
3分? いやいや5分? それとも10分以上?
僕は要請してから救急車が来るのは、大体5分程度だと思っていました。
しかし、実際のところは、平均7分30秒。
心肺停止から救命処置をせずに放置すると、約10分で蘇生は不可能と言われています。
また、1分ごとで10%ごとに蘇生率は下がっていくともいわれているそうです。
そして、心肺停止後10分以上経過すると、そこから息を吹き返すことはほぼ不可能だそうです。
この蘇生確率をグラフにしときました。
このグラフ、改めて見ると本当に恐ろしい。
そして、先ほどの救急車要請後から自宅まで来る平均時間と見比べると…。
7分30秒経って救急車が来ても、放置していたらその時点で蘇生確率25%!?
これは…。確率低すぎませんかね…。
ましてや、救急隊を要請している時点で3分くらいかかるでしょ。
ってことは、到着した時点で10分以上経過しとるやんけ!!!
この恐怖、誰でも分かりますよね。研修には実際の救急隊の方も来ていて、今の現状では7分30分よりも到着時間を縮めるのは困難な状況にあると話されていました。
そこで、救急科の医師・救急隊の方が口を揃えてあることを伝えてきます。
それは「一般の方も1次救命が行えるようにすることが大事」ということ。
1次救命とは、胸骨圧迫や人工呼吸のことですね。
これを救急隊が到着するまでに行うことで、蘇生率はここまで上昇するんです。
そのグラフがこちら。
オレンジのラインが1次救命を施した場合の蘇生確率です。
これ本当に大事。ここ、テストに出まーすレベルです。
だって、10分経過しても50%で蘇生できるんですよ!?
1次救命ハンパねー!!!
これだけ見ても、1次救命の重要性が手に取るほどに分かりますね。
11時:人形相手に1次救命実施
座学が終了後、人形を相手に1次救命とAED装着・救急隊員への引き継ぎまでデモンストレーションを実施します。
やはり、命がかかる研修なので全員本気です。
胸骨圧迫で力を抜いていると、「おい!そこちゃんとやれ!」と怒られるぐらいです。
でも、一通り終わると
「よく頑張った、あとはここをもう少し丁寧に!」と、
なんだかすごく優しいアドバイスを掛けてくれました。
なんだこのアメとムチ。
好きになってまうやろ。笑
そんなこんなで、約1時間様々なシチュエーションを想定して体に染み込ませます。
13時:ついに開始、2次救命
昼食休憩終了後、ついに始まります。
以前のICLS研修に参加した先輩もつまづいたという2次救命。
2次救命は、主に病院到着後のチーム医療としての対応を実施します。
詳細は、気道確保・輸液開始に伴う管理・心電図モニター管理・除細動実施など。
気道確保や輸液投与、マニュアル除細動実施は基本的には医師が行う項目ですが、この研修では参加者全員が医師と同様にスタッフへ指示し、チームリーダーとして救命スタッフを動かす訓練を行います。
なので、薬剤の投与タイミングから、使用薬剤まで考慮して実施しました。
これが一番難しかった…。
看護師という職種のため、インストラクターの方の指導も細かい…。笑
「血圧低下なので、ドパミンを投与!」と伝えたら、
「ノルアドレナリンの方がいいんじゃないのー。」って。
まぁ確かにそうなんですが、厳しすぎやせんかね…。
あとは、心電図波形から除細動が必要であるかどうかを判断し、実施する。
これに関してはそこまで難しくはありませんでした。
ただ、一緒のグループに参加した放射線技師の先生はここでつまづいてました。
確かに心電図なんて見ないですもんね。しょうがないですよ。
分からなくなると僕を見てくるので、
小声で「VFだよー。」「PulselessVTだよー。」なんて伝えながら一緒にクリアしました。
そして最後には軽めの修了テスト的なものがあるんですが、これが緊張しました。
突然、今まで習っていないような状況設定が始まるんですよ!?
そして、リーダーは〇〇病院のあなた。
「疾患が不明なので既往歴と症状・薬剤投与の効果から病名を当ててください。」
え!?なに言っているんですか?インストラクターさん。
それマジ医者の範囲でしょ。
整形外科のぺーぺー看護師がそんなことできるわけないでしょー。
とは、言えず…。いざ実施。
テストということもあって、同じグループメンバー全員が本気でした。
運ばれてきた時点では、波形上Asystole(心停止)。
すぐに胸骨圧迫・呼吸換気とアドレナリン投与を指示。
このころになると指示しなくても全員が勝手に動いてくれてるんですよね。
これが本当に助かりました。
2分後、再度心電図波形確認。しかし、Asystole変わらず。
再度2分経過後も、Asystole継続。アドレナリン追加。
その後しばらくすると、波形が出現。
sinus波形となったため、ABCD確認。
蘇生確認できたため、確認コールをして終了となりました。
疾患は全員で考えましたが、全然見当もつかず…。
インストラクターとの解答発表では、「低ナトリウム血症」とのことでした。
低ナトリウム血症!?
採血データもないのに、分かるわけないだろ!!!
なんだかんだで、インストラクターから講評を受けます。
「的確な指示と対応、よかったと思います。」…だって。
マジ何事もなく終わってよかった。
17時:ICLS研修終了。
やっと、終わりました。ICLS研修。
なんだか、午前中の座学が遠い過去のような気分ですね。
ICLS研修が終わると、修了証としてこんな証明書が貰いました。
貰えると思っていなかったので、本当にうれしかった。
そして、証明書の他にもこのバッジも貰いました!!!
YOKOHAMA-ER ICLSと書かれたバッジ。
マジかっけー。
看護師なら、ICLS研修は受けなさい
僕は整形外科で看護師として働いています。
整形外科という特徴もあり、あまり重症度の高い患者は他の科と比べて少ないと思います。
そのため、看護師3年目ではありますが胸骨圧迫や除細動器を実際に使ったことがありません。
なので、毎勤務前に今回も急変がないように…。
と、祈りながら勤務に当たっていました。
またそれと同時に、今後患者の急変を目の前にした時になにもできず、逃げ出してしまうのではないかという不安を抱えていました。
しかし、今回ICLS研修を受けてその気持ちが大きく変わりました。
それは万が一、患者が急変しても、なにかしらの対応はできる!ということです。
看護師として、医療関係者として最低限の仕事はこなさなければいけない。
そこで、自分に何ができるのか、何をしなければならないのかということを考え、行動する。
この重要性を改めて学ぶことができたと思う。
この研修を受けようとしている方へ。
受講する場合はテキストを渡されると思います。
看護師ならある程度理解できる内容ばかりなので、さらっとしか目を通さないかと思います。
実際僕も貰った時にチラッと見ただけで、研修に参加しました。
でも、研修を受けてみて、確認のためにもしっかりとテキストに目を通したほうがよかったなと感じてます。
なので、ぜひ今後受ける方へはテキストで再学習をしていくべきだと思いました。
最後に、今回研修のコースディレクターをしていただいた救急医師の言葉を引用させていただきます。
「看護師であるならICLS研修を受けなさい。」